この記事でわかること
- 「自院はA水準でよいのか、B水準の指定を取りに行くべきか」「連携B水準は派遣される医師全員を1,860時間まで働かせられる仕組みなのか」――医師の働き方改革は、2024年4月の適用拡大から2年が経過した2026年現在も、病院経営者・人事部長にとって判断の難しいテーマであり続けています。
- 本記事では、A・B・連携B・C-1・C-2の各水準を一次情報ベースで正確に整理し、健康確保措置の実装、宿日直許可、医師シフトの組み方を病院経営目線で解説します。特に連携B水準は誤解の多発ポイントであるため、構造の解説に紙幅を割きました。
本記事について | 2026年4月時点の公開情報をもとに作成しています。一般的な解説を目的とした記事であり、個別具体の運用判断は社会保険労務士・医療労務専門コンサルタント・所管行政等の専門家へご相談ください。労務専門コンサルタントの監修を強く推奨します。
医師の働き方改革とは|2024年4月開始の制度
医師の働き方改革は、2018年6月成立・2019年4月施行の働き方改革関連法において5年間の適用猶予を受けた医師について、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用拡大された制度の総称です。
制度の背景
医師の長時間労働は地域医療の維持と表裏一体の構造的問題でした。救急医療・産科・小児科を中心に、夜間・休日対応を支えるために月100時間を超える時間外労働が常態化していた医療機関も少なくありません。一方で、医師個人の健康確保・離職防止・診療の安全性の観点から、上限規制と健康確保措置の組み合わせが必要とされました。
出典: 厚生労働省「医師の働き方改革」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/ishi-hatarakikata_34355.html
2024年4月から何が変わったか
医師には次の2つの仕組みが整備されました。
- 時間外労働の上限規制:原則A水準(年960時間)を全医師に適用し、特例水準(B・連携B・C-1・C-2、年1,860時間)を指定された医療機関に限定して適用
- 健康確保措置:月100時間以上見込み医師への面接指導、勤務間インターバル、代償休息、連続勤務時間制限、副業・兼業先労働時間の通算把握
これらは医師個人ではなく医療機関に対する義務として定められており、病院経営者・人事部門の主体的な対応が求められます。
対象となる医師
対象となるのは、医療機関に雇用契約で勤務するすべての医師です。具体的には次のような立場が含まれます。
- 勤務医(常勤・非常勤)
- 臨床研修医・専攻医
- 大学病院から地域医療機関へ派遣される医師
- 病院に雇用されている管理職医師(管理監督者として労基法41条2号に該当する場合は労働時間規制の一部が適用除外)
適用除外
次のケースは時間外労働の上限規制の適用除外となります。
- 個人開業医(雇用主たる医師個人):労働基準法上の労働者ではないため適用外
- 管理監督者に該当する医師:労基法41条2号により労働時間規制の一部が適用除外(ただし健康確保措置の趣旨は及ぶ)
- 雇用契約を結ばない真のフリーランス医師:労働者でないため適用外
ただし、個人開業医が雇用する勤務医・看護師・事務スタッフは労働者として労働時間規制の対象となります。「開業医だから労働時間規制とは無縁」と誤解しないよう注意が必要です。
→ 業種横断の整理は「2024年問題まとめ|業種別の対応と影響」、建設業との比較は「建設業の2024年問題対応|時間外上限と現場の工夫」をご覧ください。
A・B・連携B・C水準とは|時間外上限の比較
医師の時間外労働の上限は、原則A水準と4種類の特例水準(B・連携B・C-1・C-2)の計5区分で整理されます。B・連携B・C-1・C-2の特例水準を適用する医療機関は、総称して「特定労務管理対象機関」と呼ばれます(医療法上の正式名称)。
ここでの「年960時間」「年1,860時間」は、いずれも時間外労働+休日労働の合計で計算します。単月100時間未満も同様に時間外労働+休日労働の合計で判定します。
A水準|年960時間
一般則と同水準で、原則として全医師に適用される基本水準です。指定の取得は不要で、自院の医師全員にこの上限が及びます。
A水準であっても、月100時間以上の時間外労働が見込まれる医師には、産業医による面接指導が必須です。「特例水準だけ面接指導が必要」と誤解されがちですが、A水準でも見込み時間が100時間以上であれば対応が必要となります。
B水準|年1,860時間
地域医療確保のため、救急医療等を担う医療機関に勤務する医師に適用される特例水準です。
- 指定主体:都道府県知事
- 対象:救急医療・在宅医療・地域医療確保に資する医療提供を担う医療機関に勤務する医師
- 終期:2035年度末を目標に解消する方針(厚生労働省。法的廃止が確定しているわけではありません)
連携B水準|年1,860時間
連携B水準は、医師の働き方改革のなかで最も誤解が多い水準です。意思決定を誤ると病院経営に重大な影響が及ぶため、構造を正確に押さえる必要があります。
連携B水準は「派遣される医師の合算上限」ではありません。
正しくは、地域医療確保のため他の医療機関に医師を派遣する側の医療機関(大学病院、地域医療支援病院等)が指定を受ける水準です。指定を受けた医療機関では、次の構造で運用されます。
- 自院単独での時間外+休日労働は年960時間以内に収める
- 副業・兼業先(派遣先)での労働時間と通算した個々の医師の上限が年1,860時間
つまり「自院での労働は960時間以内に抑えつつ、派遣先と合算したときに1,860時間まで許容できる枠組み」であって、自院単独で1,860時間まで働かせてよい仕組みではありません。
- 指定主体:都道府県知事
- 対象医師:自院単独の予定が960時間以内であり、かつ副業・兼業先と通算した予定が960時間を超える見込みの医師
- 終期:2035年度末を目標に解消する方針
出典: 厚生労働省「医師の働き方改革」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/ishi-hatarakikata_34355.html 出典: 厚生労働省パンフレット https://www.mhlw.go.jp/content/001115352.pdf
C-1水準|年1,860時間
臨床研修医・専攻医の集中的な技能習得期間に適用される特例水準です。臨床研修プログラム・専門研修プログラムの修了に必要な経験を一定期間内に積むためには、上限を960時間とすると研修内容を満たせない場合があるため、C-1水準が用意されています。
- 指定主体:都道府県知事
- 対象:臨床研修医・専攻医(指定はあくまで医療機関単位)
C-2水準|年1,860時間
高度な技能習得を目指す医師に適用される特例水準で、指定プロセスがB・連携B・C-1と異なります。
- 指定プロセス:医療機関が作成する医師労働時間短縮計画について、医療機関勤務環境評価センターの第三者評価を受けるとともに、C-2水準特有の特定高度技能研修計画について厚生労働大臣の確認(C-2水準関連審査)を受けたうえで、都道府県知事が指定
- 対象:特定の高度技能を集中的に習得する医師
出典: 厚生労働省「医師の働き方改革 C-2審査・申請ナビ」 https://c2-shinsasoshiki.mhlw.go.jp/system/
早見表
| 水準 | 年間上限(時間外+休日労働) | 対象 | 指定主体 | 健康確保措置 | 終期 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 960時間 | 全医師の原則 | 指定不要 | 月100h以上見込み時に面接指導 | — |
| B | 1,860時間 | 救急医療等を担う医療機関の医師 | 都道府県知事 | 全項目 | 2035年度末を目標に解消 |
| 連携B | 1,860時間(通算) | 派遣する側の医療機関が指定。自院は960h、副業・兼業先と通算で1,860h | 都道府県知事 | 全項目 | 2035年度末を目標に解消 |
| C-1 | 1,860時間 | 臨床研修医・専攻医 | 都道府県知事 | 全項目 | — |
| C-2 | 1,860時間 | 高度技能習得医師 | 厚労大臣の確認(C-2水準関連審査)後、都道府県知事が指定 | 全項目 | — |
→ 36協定の特別条項との関係は「36協定とシフト管理|上限・特別条項・届出」もあわせてご参照ください。
病院経営目線|どの水準を取るべきか
A水準で運用するか、特例水準(B・連携B・C-1・C-2)の指定を取得するかは、地域医療における自院の役割と医師数のバランスを踏まえた経営判断となります。
自院がB水準指定を受けるべきかの判断軸
B水準の指定を検討する場面では、次の観点で整理することが多くなります。
- 救急受け入れ件数(特に時間外救急)と当直体制
- 産科・小児科・周産期医療の体制
- 医師数と1人あたり時間外見込み
- 地域医療における自院の代替可能性
- 健康確保措置の実装コスト(面接指導の体制、代償休息の運用)
A水準で運用できる体制を組めるなら、健康確保措置の実装負担を抑える観点から指定を取らない選択もあり得ます。一方で、現実に医師の時間外労働が960時間を超えている場合、指定を取らずに上限超過を放置することは罰則・行政指導のリスクに直結します。
連携B水準の活用シーン
連携B水準は、大学病院や地域医療支援病院から地域の医療機関に医師を派遣している構造で活用されます。前述のとおり、「自院(派遣する側)が指定を受け、医師の自院労働時間は960時間以内に抑えつつ、派遣先での労働を含む通算で1,860時間まで許容」する仕組みです。
「派遣される医師全体の合算上限を1,860時間にできる」という解釈で意思決定を進めると、自院での労働時間を960時間以内に抑える運用設計が抜け落ち、後から大規模な勤務表見直しが必要になる重大なミスにつながります。指定検討の最初の段階で、医療労務専門コンサルタントを交えた構造の確認を推奨します。
C水準指定のメリット
C-1水準は臨床研修医・専攻医の症例集積機会を確保する観点で、C-2水準は高度技能習得を目指す医師の研鑽機会を確保する観点で活用されます。研修体制の維持・若手医師確保の競争力に直結するため、大学病院・基幹型臨床研修病院では指定取得が広く検討されています。
指定申請の流れと評価機能
B・連携B・C-1水準の指定は、医療機関が医師労働時間短縮計画を作成し、医療機関勤務環境評価センターの第三者評価を受けたうえで、都道府県知事に申請する流れが基本です。C-2水準は、これに加えて特定高度技能研修計画について厚生労働大臣の確認(C-2水準関連審査)が前置されます。
健康確保措置の実装
B・連携B・C-1・C-2の特例水準を適用する医療機関には、医療法・関連通知に基づく健康確保措置の実装が義務付けられます。A水準でも月100時間以上の見込みがあれば面接指導は必須です。
月100時間以上見込みの医師への面接指導(必須)
時間外労働+休日労働が月100時間以上に達する見込みの医師には、産業医(または医療機関で別途定める面接指導実施医師)による面接指導が必須です。これはA水準の医師でも適用されます。
面接指導の結果、医師の健康状態に応じて、就業上の措置(就業制限、勤務軽減等)を講じる責任が医療機関に発生します。
連続勤務時間制限(28時間/A水準は努力義務、特例水準は義務)
連続勤務時間制限は「業務開始から28時間以内」を原則とし、水準によって義務・努力義務の区分と、宿日直許可の有無による適用除外があります。
- B・連携B・C水準の医療機関では義務:通常勤務も含め、業務開始から28時間以内とすることが義務付けられる
- A水準は努力義務:上記と同様の措置を講ずるよう努めることが求められる
- 宿日直許可ありの宿日直は適用除外:9時間以上従事した場合は勤務間インターバル確保とみなされる
- 初期臨床研修医(C-1水準適用者)の特例:原則として連続勤務時間制限は15時間(始業から24時間以内に9時間の連続休息を確保)。指導医の勤務に合わせる必要がある場合は連続勤務24時間まで認められるが、その後の勤務間インターバルは24時間以上確保が必要
また、宿日直許可なしの宿日直に従事する場合は、業務開始から46時間以内に18時間連続休息を確保する必要があり、結果として28時間連続勤務制限となります。「連続勤務制限は宿日直時だけの話」とする理解は誤りで、B・連携B・C水準を取得している医療機関では、例えば長時間の手術・経過観察・引き継ぎ等を含めた業務全体で「業務開始から28時間以内」を遵守する勤務設計が求められます。
出典: 厚生労働省「医師の働き方改革(健康確保措置)」 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001145301.pdf
勤務間インターバル(9時間/A水準は努力義務、特例水準は義務)
勤務間インターバルは業務開始から24時間以内に9時間の連続した休息時間を確保することが求められます。連続勤務時間制限と同様、B・連携B・C水準では義務、A水準では努力義務とされています。宿日直許可ありの宿日直に9時間以上従事した場合は、インターバル確保とみなす扱いとなります(実質的に18時間相当の休息と整理されます)。
なお、医師に課されるこの勤務間インターバルは、現在議論が継続している労働時間等設定改善法上の一般義務化(2025年12月23日に2026年通常国会への改正法案提出は正式に見送られ、2027年通常国会への提出が有力視されている)とは別の枠組みです。医師の働き方改革における勤務間インターバルは、特例水準を取得した医療機関に課される医師個別の措置という位置づけです。
→ 一般的な勤務間インターバル制度の最新動向は「勤務間インターバル制度とは?義務化の最新動向と企業がやるべき対応」で解説しています。
出典: 厚生労働省「勤務間インターバル」 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000806367.pdf
代償休息の付与
やむを得ない理由で勤務間インターバル等が確保できなかった場合、当該労働時間相当の代償休息を翌月末までに付与する必要があります。「いつかまとめて」ではなく、付与期限が定められている点に注意が必要です。
副業・兼業先の労働時間の通算
医師の副業・兼業については、労働基準法第38条第1項により、自院と副業・兼業先の労働時間を通算して上限を判定します。医師特例として、通算管理は自己申告ベースで行いつつ、使用者には把握義務が課されます。
具体的には、自院は派遣先・副業先での勤務予定・実績を医師本人から申告してもらい、自院の勤務表と合わせて通算管理する運用が基本となります。連携B水準を取得している医療機関では、この通算管理が制度の前提条件となるため、運用ルールの整備が欠かせません。
出典: 厚生労働省「医師の働き方改革に関する論点整理」 https://www.mhlw.go.jp/content/001115352.pdf
宿日直許可とシフト管理
医師の労働時間管理を語るうえで避けて通れないのが、宿日直許可(労働基準法第41条第3号)の取り扱いです。
宿日直許可とは(労基法41条3号)
宿日直許可は、「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」について、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用を除外する制度です。医療機関では、夜間・休日の宿直・日直について労働基準監督署長の許可を受ければ、当該時間を労働時間としてカウントしない取り扱いが可能です。
許可基準
許可基準は「特殊の措置を必要としない軽度・短時間の業務」に限られます。令和元年7月1日基発0701第8号により、医療機関の宿日直許可基準が明確化されています。代表的な要件は次のとおりです。
- 通常の勤務時間と同態様の業務でないこと(外来診療や手術等が日常的に発生する場合は許可対象外)
- 病室の定時巡回、少数の要注意患者の状態観察、緊急時のための待機等が中心であること
- 休息時間が確保され、十分な睡眠が可能であること
- 宿直は週1回、日直は月1回が基本
宿日直時間が労働時間にカウントされない条件
形式的に宿日直許可を取得していても、実態として通常勤務と同等の業務(救急対応、入院患者の頻繁な処置等)が行われている場合は、その時間は労働時間として扱う必要があります。「許可があるから労働時間ではない」と機械的に処理すると、後の労働基準監督署の調査で是正勧告を受けるリスクがあります。
シフト作成時の注意点
宿日直許可ありの当直枠と、許可なしの当直枠(労働時間としてカウントする枠)を区別してシフト表に記録すること、宿日直時間中の業務発生実態を別途記録することが、運用上の基本となります。
医師シフト(勤務表)の組み方|水準別パターン
医師の勤務表は、診療科の特性、当直体制、宿日直許可の有無、研修プログラムの要件などが絡み合うため、水準ごとに考え方が異なります。
A水準:原則的なシフトパターン
A水準では年960時間の上限を前提に、日勤・当直・翌日休み(宿日直許可ありの場合を除く)の組み合わせで月の労働時間を組み立てます。月の途中で時間外見込みが基準を超えそうな場合、外来枠の調整や応援医師の手配で平準化を図るのが基本です。
B水準:地域医療確保型
B水準では年1,860時間の枠を前提とし、救急当番・当直頻度を踏まえた勤務表を組みます。月100時間以上見込みの医師への面接指導、代償休息の付与計画を、シフト作成段階から織り込んでおく必要があります。
連携B水準:派遣スキーム
連携B水準では、自院単独の労働時間を960時間以内に抑える勤務表設計と、派遣先の労働時間との通算管理を両輪で進めます。派遣先での勤務シフト・実績を月次で取得し、自院の勤務表と合算して個々の医師の年間累計を可視化する運用が必須です。
C水準:研修医のローテーション設計
C-1水準では、臨床研修プログラム・専門研修プログラムが定める診療科ローテーションを月別に組み、症例集積機会を確保しつつ年1,860時間の枠内で勤務表を設計します。研修医個別の進捗状況に応じてローテーション順を入れ替えると上限管理が複雑になるため、年初の計画段階での精度が重要です。
→ 看護チームとの連動については「看護師シフトの作り方|3交代・2交代の実例(近日公開予定)」、医療機関の人員配置基準については「人員配置基準とは?医療・介護・保育・障害福祉・製造の業種別早見表」をあわせてご参照ください。
副業・兼業の医師シフトと労働時間通算
連携B水準を取得していない医療機関でも、医師の副業・兼業に対する労働時間通算は労働基準法第38条第1項により求められます。
自院+他院の労働時間合算ルール
医師個人ごとに、自院の所定労働時間・時間外労働と、副業・兼業先の労働時間を合算して、原則A水準の年960時間(連携B水準指定下では年1,860時間)以内に収める必要があります。
申告ベースの管理方法
医師から副業・兼業先での勤務予定・実績を申告してもらい、自院の勤務表と合わせて通算管理を行います。申告様式の整備、申告漏れを防ぐ運用ルール、申告内容と実態の整合確認といった事務負担が新たに発生しています。
→ 関連: 年5日有給取得義務とシフト運用
AIシフト管理で医師勤務表を自動作成する
医師の勤務表は、診療科別の必要人数・有資格者要件・宿日直許可の有無・連続勤務時間制限・勤務間インターバル・副業通算・年間時間外見込みといった多数の制約を同時に満たす必要があります。
手作業作成の限界
ExcelやGoogleスプレッドシートで医師勤務表を作成している医療機関では、次のような状況で見落としが発生しやすくなります。
- 月の途中で「この医師はこのペースで行くと年1,860時間に達する」と気づけない
- 急な救急対応で代替シフトを組んだ結果、勤務間インターバルが確保できなかった
- 副業先の勤務予定を考慮せずに自院の当直を入れてしまった
- 宿日直許可なしの当直なのに連続勤務時間が28時間を超えていた
タグ人数制約で配置要件を自動チェック
シフト管理ツールに「タグ人数制約」を設定すれば、シフト確定時に診療科別・専門医別の配置要件を自動検証できます。
- 内科病棟は常時2名以上の内科医を配置
- 救急当直は専門医タグ保有者が必須
- 産科は周産期母体・胎児専門医タグ保有者を含む
当直明け休み・連続勤務制限の自動順守
シフッタは、当直明けの勤務を入れない、宿日直許可なしの当直の場合は連続勤務時間制限を満たす、勤務間インターバルを確保するといった制約を組み合わせて、自動で違反のない勤務表を生成できます。連携B水準を取得している医療機関では、副業・兼業先の予定を入力すれば通算管理も自動化できます。
シフッタの活用シナリオ
シフッタ(Shiftta)は、人員配置基準・有資格者配置・勤務間インターバル・連続勤務時間制限・年間時間外見込みといった複雑な制約をAIエージェントが同時に考慮し、最適なシフトを生成するSaaSです。医師勤務表と看護師シフトを統合管理することで、医療チーム全体の運用効率を高められます。
まとめ|病院経営の意思決定を支える正確な制度理解
医師の働き方改革は、単なる労働時間管理の問題ではなく、地域医療体制・人材確保・診療体制設計に深く関わる経営課題です。本記事のポイントを再確認します。
- A水準は年960時間(時間外+休日労働)。月100h以上見込みの医師には面接指導が必須
- B水準は救急医療等を担う医療機関に都道府県知事が指定。年1,860時間
- 連携B水準は派遣する側の医療機関が指定。自院は960時間、副業・兼業先と通算で1,860時間
- C-1は臨床研修医・専攻医、C-2は高度技能習得医師。C-2は厚労大臣の確認(C-2水準関連審査)後に都道府県知事が指定
- B・連携B水準は2035年度末を目標に解消方針(廃止が確定したわけではない)
- 連続勤務時間制限28時間はB・連携B・C水準では義務、A水準では努力義務。宿日直許可ありの宿日直は適用除外
- 副業・兼業の労働時間通算は自己申告ベース+使用者の把握義務
- 個人開業医は適用外。開業医が雇用するスタッフは対象
特に連携B水準を「派遣される医師の合算上限」と読むのは致命的なミスです。経営判断の前提を誤らせるため、医療労務専門コンサルタントの監修を受けたうえで指定取得・運用設計を進めてください。