この記事でわかること

  • 「シフトを作っても、明日の朝にはもう一度書き直している」——保育園の管理者なら、誰もが心当たりのある感覚ではないでしょうか。
  • 月次で確定する計画シフトと、当日の急な欠勤や体調不良に応じた日次の運用調整——保育園では、この二つを並行して回すことが業務上どうしても必要になります。月単位の変形労働時間制で労務管理する以上、月次のシフト表は確定させなければいけない。一方で、子どもを預かる現場は当日にならないとわからない変化が次々起きる。どちらも欠かせないのです。
  • シフッタ編集部は2026年4月、保育領域でシフト作成を担当する管理者3名(公立認可保育園・私立認可保育園・こども園)に1時間ずつのインタビューを実施しました。
インタビュー記事

本記事は2026年4月実施の現場管理者インタビューに基づく、シフッタ編集部の独自定性調査レポートです。一般的な解説記事ではなく、実際の現場で語られた言葉をもとに構成しています。

本記事について

2026年4月実施の管理者3名インタビューに基づく定性調査の記録です。サンプルサイズは限定的であり、特定の主張を統計的に裏付けるものではありません。保育領域の構造理解の参考資料としてお読みください。

調査の概要

項目内容
実施日2026年4月28日
対象者保育領域でシフト作成を担当する管理者・主任 3名
形態公立認可保育園 / 私立認可保育園 / こども園 各1名
形式オンラインインタビュー
内容シフト作成の頻度・時間・フロー・苦労点・配慮点

ケース1: 公立認可保育園の主任 — 紙にパズルのように書いていく

最初にお話を聞いたのは、東京都内の区立認可保育園で主任を務める方でした。保育士歴は15年目。担当する園の規模は、児童110名・職員20名(正規)です。

この園では当番表の係を順番に回しているそうです。属人化させない仕組み。今年はその担当が回ってきた年でした。

紙に手書きで、まさにパズル

事前アンケートで使用ツールに「紙で手書きでパズルのようにやっている」と書かれていたのが印象的でした。実際に話を聞くと、その通りの世界観です。

「2〜3日かけて割り振った後、回収して2〜3人で調整するんです。勤務時間中にはなかなかできないので、業務外で進めています」

組み立ては早番(7:00〜)、7:30、8:00、8:30の普通番、9:30、9:45、10:30といった時間帯を埋めていく作業。同時に守らなければいけない条件が積み重なります。

  • 年齢別配置基準(0歳3:1, 1〜2歳6:1, 3歳15:1, 4〜5歳25:1)の遵守
  • 加配保育士・障害児加算の運用
  • 行事・延長保育時の人員確保

ベテランと若手のバランスが鍵

遅番に若手職員ばかりにならないよう、ベテランを必ず入れるんです。フロア全員が若手になってしまうことは避けたい」

経験のバランスへのこだわりは強烈でした。さらに公立保育園特有の物理制約として、

鍵の数が限られているので、特定時間帯に入れる人数に制約があるんです」

物理鍵の数が制約条件になる——これは介護にも病院にも出てこない、保育園特有の事情です。何度チェックしても同じような偏りが起きる——紙の上で複数の制約を同時に解く難しさが、最も色濃く現れていたケースでした。

ケース2: 私立認可保育園の副主任 — 月2時間でも消耗する別の理由

二人目は、東京都の認可保育園で副主任を務める方。園の規模は児童60名、職員は正規12名・パート8名前後です。

この園では副主任が固定でシフト作成を担当しています。ツールはExcel。会社からExcelファイルが送られてきて、それを印刷してから手で書き込んでいくスタイルです。月の作成時間は2時間——ケース1の方と比べるとかなり短い。

組み方は確立されている

「早番・遅番を先に入れて、それから中番を入れていくんです。早番・遅番が決まれば、中番はそんなに難しくない」

連勤への配慮として「遅番の翌日に早番を入れない」、曜日の偏りが出ないようにする、月の当番回数・年間の当番回数を見渡す——フローは確立されていて、作業自体はそれほど時間がかかりません。

でも消耗するのは「人間関係」

ところが、彼女が事前アンケートで挙げた苦労点は、作業の難しさとは別の方向を向いていました。

  • 早番・中番・遅番のローテーション
  • 人間関係を考慮したシフト作成
  • 毎回休み希望を月金に出す人が固定化され、他の職員が希望を出しづらい
  • 休み希望が多い時の配置

そして、シフト作成で最も消耗する瞬間を、こう表現してくれました。

金曜日は早番にしたい人が多いんです。休み希望を月・金に出す人が固定化して、他の職員が希望を出しづらい雰囲気になっている」

この問題は単なる希望調整ではなく、人間関係の力学を含んでいます。

  • 早番・遅番は2人でペアを組む
  • 誰と組むか」で職員間の相性が出る
  • 偏りが多いと文句を言われる
  • 結果、副主任が気を遣って配分する精神的コストが膨らむ

パートのしわ寄せが正規に集中する

もう一つの構造的な悩みは、雇用形態の組み合わせです。

パートの方は週X日という契約が多いので、曜日ごとの希望が決まっているため、正規職員が休みづらい曜日がある」

パートが特定曜日に入れない結果、正規にしわ寄せが集中する曜日が必ず生じているとのことでした。

ケース3: こども園の主任 — 紙のシフトと、ホワイトボードで動かす日々

三人目は、こども園の主任。園の規模は園児45名(0〜5歳の各クラス)、職員20名(うち有資格保育士は約16名)です。労働時間制は1ヶ月単位の変形労働時間制。

シフト作成は月1回、作成時間は約2〜3時間。希望提出は毎月20日まで、20〜25日の間に草案を作る——フローは確立されています。

早番・遅番の2名配置から固定する

シフト作成の最初の手順について、こう説明してくれました。

早番と遅番には保育士+もう1名の合計2名が必ず配置されていないといけないんです。これが監査の指摘対象になるので、まずこの2名配置を最優先で埋めていきます」

ここで保育園シフトの鉄則が見えます。介護領域で「夜勤先行」が共通鉄則なように、保育では「早番・遅番の2名配置を最初に固定する」が共通鉄則。シフトの組み立ては、必ずここから始まります。

でも、紙のシフトだけでは現場は回らない

ここから、保育園特有の構造が浮かび上がってきます。

「シフトはあくまで月次の労務計画として確定するものなんです。クラスごとの担当までは紙のシフト表に記載せず、別のホワイトボードで実際の勤務表を作成しています」

ホワイトボードには時間・名前・曜日が書かれ、名前シールを貼って動かす運用。なぜそうしているのか。

  • 病欠などの突発的な事由は毎日のように発生する
  • そのたびに紙のシフトを書き換えていたら、月次計画としての記録の連続性が崩れる
  • 朝礼で「今日のクラス担当はこう」と即座に伝える必要がある

つまり、月次で確定させた計画シフトと、当日の現実に対応する日次運用シフト——保育園ではこの両方を回さないと業務が成立しないのです。これは現場の手抜きではなく、変形労働時間制で月次計画を確定する制度と、子どもを預かる現場の不確実性、その両方を成立させるためにやむを得ず必要になっている構造でした。

3つを並べてみえた、保育シフトの構造

3名の話をひとりずつ聞いた上で、並べてみると、保育園のシフト作成の本質が浮かび上がります。

なぜ保育園は「計画」と「実態」の両方を回さなければいけないのか

3園すべてに共通していたのが、月次計画シフトと日次運用シフトの二層構造でした。

  • 月次の変形労働時間制 → 月次計画シフトを確定する必要がある(労務管理・行政提出・監査対応)
  • 当日の急な欠勤・体調不良・体調変化 → 日次の運用調整が毎日のように発生する
  • 朝礼で全員にその日の体制を共有する → 即時に動かせる媒体(ホワイトボード等)が必要

3園とも媒体は違いましたが(紙手書き / Excel印刷後に手書き / 紙+ホワイトボード)、「計画として確定した月次シフト」と「日次の現実の運用」を別の手段で回すという構造は同じです。

業界横断で共通する3つの苦労

形態は違っても、3名が共通して苦労していたのは次の3点でした。

1. 年齢別配置基準の遵守と組み立ての複雑性

公立認可保育園のケース1がもっとも色濃く語っていましたが、私立認可保育園・こども園にも共通する制約です。

2. 特定曜日への希望集中と人間関係

「金曜日早番希望が固定化される」「月金に休み希望が集中する」「誰と組むかで相性が出る」——いずれも単なる希望調整ではなく、人間関係の力学を含んでいます。

3. パートの曜日固定希望と正規へのしわ寄せ

3園に共通して、パート職員は曜日ごとの勤務日が事前に決まっていました(「週X日契約」「来られる時間に出勤」「年間総時間契約」)。早番・遅番の2名配置は毎日守らないといけないため、パートが入れない曜日のしわ寄せは正規に集中します。

経験バランスと物理制約

そして、保育領域固有の課題として、

  • 若手とベテランの経験バランス(特にケース1で強調)
  • 物理制約(鍵・部屋の数)(公立保育園特有)

——これらは「数値で表せない条件」を素直に表現できるツール側の柔軟性が必要です。

3名の話から導かれた、保育園シフトツールの要件

#要件背景
1早番・遅番の2名配置(保育士+1名、子育て支援員等で代替可)絶対ルール監査対応の基本
2年齢別配置基準(0歳3:1, 1〜2歳6:1, 3歳15:1, 4〜5歳25:1)の自動チェック法令遵守
3加配保育士・障害児加算の運用補助金維持
4園児人数に応じた職員数の自動算出行事・延長対応
5月次計画シフトと日次運用ビューの両立業務上必要な二層構造
6若手・ベテランの経験バランス自動配置保育の質維持
7物理制約(鍵・部屋)の自由設定施設固有事情
8特定曜日への希望集中の検知・警告偏り防止
補足

3歳児15:1・4〜5歳児25:1は令和6年度(2024年4月)改正後の新基準です。経過措置として旧基準(3歳児20:1・4〜5歳児30:1)の運用も認められていますが、3歳児基準については令和10年度(2028年度)から15:1が完全義務化される予定です(こども家庭庁)。なお、早朝・夕方など児童が少数となる時間帯の2名配置については、保育士2名のうち1名を子育て支援員研修修了者で代替することが認められています(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準)。

年齢別配置基準の詳細は「人員配置基準|業種別の遵守ポイント」で別途解説しています。

なぜ「ホワイトボード」が捨てられないのか

最後に、3名のインタビューで強く感じたことを共有します。保育園の「紙+ホワイトボード運用」は、デジタル化への抵抗があるから残っているのではなく、業務上の合理性があるから続いているということです。

  • 朝礼で全員が一目で見える
  • 名前シールで直感的に動かせる
  • 急な変更が3秒で反映できる
  • 月次計画シフトの紙には手を入れずに済む

つまり、「Excelに置き換える」だけでは保育園の現場には届かない。プロダクト側に必要なのは、

  • ホワイトボード級の即時性と共有性
  • ドラッグ&ドロップでシール感覚の操作
  • 月次計画シフトと日次運用ビューの切替
  • オフライン対応(朝礼で停電やWi-Fi不調でも見えること)

——という、「現場の手触り」をデジタルで再現する設計思想です。月次計画と日次運用、両方をデジタルで両立させる。これが保育園特化のシフトツールに求められる本質だと、3名の話から強く感じました。

まとめ: 保育園シフトは「両立する難しさ」の領域

3名のインタビューを通じて、保育園シフト作成の本質的な難しさが見えました。

それは作業時間の長さではありません。むしろ、

  • 法令配置基準(年齢別比率・加配)の正確性
  • 経験バランス(若手とベテラン)の自動調整
  • 特定曜日・特定職員への偏りの抑制
  • 月次計画と日次運用、両方を回す両立の難しさ
  • 物理制約まで含めた現場固有事情への対応

という、「両方やらないといけないことを両立させる柔軟性」が問われる領域です。

そして、配置基準・加配・経験バランス・特定曜日への希望集中・パートの曜日固定希望……こうした複数の制約を満たしながら、毎月の計画と毎日の運用を両立させ続ける作業は、紙やExcelの手作業ではどうしても限界があります。月次計画の組み立てを根本から変える選択肢の一つが、シフト作成ツールの活用です。

シフッタは保育領域に特化した機能として、園児人数からの必要職員自動算出(2026年実装予定)法定年次有給休暇とそれ以外の希望休(特別休暇等)の優先度の区別ヘルプ募集のスマホ通知を順次提供予定です。月次計画と日次運用、両方を一つのツールで回せる世界を目指しています。

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