この記事でわかること
- 「介護施設のシフト作成は大変」——よく語られる一文ですが、では何が、どう大変なのか。実は、施設形態が違えば現場で起きていることもまるで違います。
- シフッタ編集部は2026年4月、介護領域でシフト作成を担当する管理者3名(有料老人ホーム・小規模多機能型居宅介護・サ高住の訪問介護)に1時間ずつのインタビューを実施しました。3名は同じ「介護シフト作成」の担い手ですが、月の作成時間は1〜2時間から20時間超まで10倍以上の差があり、口にする苦労の中身も別物でした。
本記事は2026年4月実施の現場管理者インタビューに基づく、シフッタ編集部の独自定性調査レポートです。一般的な解説記事ではなく、実際の現場で語られた言葉をもとに構成しています。
2026年4月実施の管理者3名インタビューに基づく定性調査の記録です。サンプルサイズは限定的であり、特定の主張を統計的に裏付けるものではありません。介護領域の構造理解の参考資料としてお読みください。
調査の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施日 | 2026年4月28日 |
| 対象者 | 介護領域でシフト作成を担当する管理者・主任 3名 |
| 形態 | 有料老人ホーム / 小規模多機能型居宅介護 / サ高住・訪問介護 各1名 |
| 形式 | 1時間のオンラインインタビュー |
| 内容 | シフト作成の頻度・時間・フロー・苦労点・配慮点 |
それでは、お一人目から。
ケース1: 有料老人ホーム主任 — 「最後はある程度妥協して進めるしかない」
最初にお話を聞いたのは、定員67名の有料老人ホームで主任を務める方でした。介護業界での勤務歴は約13年、シフト作成は3〜4年ほど担当しています。
シフト作成は毎月ではなく、2〜3ヶ月に1回。担当者がチーフの異動などで2〜3名のローテーションになっており、その持ち回りで自分の番が回ってくる仕組みです。1回の作成にかかる時間は、フルタイム2日(9時〜18時)に追加で5〜6時間。つまり1回20時間以上の作業量です。
勤務種別が8つ以上ある
「うちはA勤からF勤、J勤、それから最近増えたI勤と、勤務種別だけで8種類以上あるんです」
A勤は7時から16時、B勤は8時から17時というように1時間ずつずれた勤務帯。J勤は12時から21時の遅番系。F勤は17時から翌10時までの夜勤。最近増えたI勤は週休3日だが1日10時間勤務という、新しい働き方への対応です。
1日に必要な人数も細かく決まっています。
A勤4名、B勤2名、C勤(リーダー)1名、D勤2名、E勤1名、J勤1名、F勤2名。それに加えて入浴当番が月木は3名、日曜なし、その他は2名ずつ。
これだけでも複雑なのに、さらに受診対応・外出レクで日々人数が動き、職員は3チームに分かれていて月1回のチーム会議のためには該当日に全員早番で揃える必要があります。
「2連休の翌日は夜勤にしてあげたい」
「理想を言えば、職員が2連休を取った翌日は夜勤にしてあげたいんです。体力的に休んだあとの夜勤がいいので。でもそれができる職員とできない職員がいて、結局できないんですよね」
この方が組み立てるときに気にしているのは、
- 連続入浴当番は避ける
- 早朝勤務の翌日に遅番(遡り勤務)を入れない
- リーダー資格者を均等に配置する
- 固定勤務の職員と特定勤務帯しか対応できない職員を考慮
——これらの配慮を全部やろうとした結果、20時間に到達しているわけです。
「最後はある程度妥協して進めるしかない」
この一言が、現場の実感を端的に表していました。完全解を求めると終わらない。属人的な勘で「ここは仕方ない」と打ち切る。それが介護現場の現実です。
ケース2: 小規模多機能型居宅介護の管理者 — 「正しく組めているかが心配」
二人目は、利用者29名の小規模多機能型居宅介護の管理者。介護業界の勤務歴は5〜6年です。
シフト作成は月1回、2〜3時間で終わるそうです。ケース1の方と比べると圧倒的に短い。ところが事前アンケートで挙げてもらった「苦労している点」は、まったく違う方向を向いていました。
- 人員配置基準(3対1等)の遵守
- 常勤換算の計算
- 加算要件の運用
「組む難しさ」より「正しく組めているかの検証」が痛みになっているのです。
加算は事業所収益に直結する
介護報酬の加算は事業所の収益に直結するため、配置を間違えると収益に響く。彼女がプロダクトに求めるのは時短ではなく、「これで合っているか」を機械的にチェックしてくれる仕組みでした。
3形態と宿泊カレンダー
加えて、小規模多機能特有の構造があります。1人の利用者が「通所したり、訪問を受けたり、宿泊したり」する形態です。
「利用者が宿泊される日を先に把握しておく必要があるんです。シフトを組む前に宿泊カレンダーを見て、必要な人数を読んでから動き出します」
シフトの軸とは別に、利用者の宿泊予定という別の軸が並走している——大規模入居施設にはない複雑性です。
多事業所からのヘルプ要請
「他の事業所からヘルプ要請がくるんですよね」
中規模法人では複数の事業所をまたいで応援要請が日常的に発生します。自事業所のシフト最適化では完結せず、法人全体での人繰りが必要——これが中規模複合施設の独自課題でした。
「シフト作成が早くなる」では響かない。「配置基準を自動で守ってくれる」「事業所間で人の融通がつく」ほうが、この方には刺さるニーズなのだと思います。
ケース3: サ高住・訪問介護の管理者 — 「Wワークしている人が多くて」
三人目は、入居者41名(うち訪問対象38名)のサ高住で訪問介護を管理する方。介護業界の勤務歴は6年で、現在管理者へ移行中です。担当する正社員は15名。
シフト作成にかかる時間は月1〜2時間。ケース1の方の20時間と比べれば桁違いに速い。理由は明確で、「夜勤専従者がいるおかげで、夜勤→明→休の3日サイクルが自動的に決まるから」。残りの日勤を埋めればほぼ終わります。
苦労ポイントは「組むこと」じゃない
ところが、彼女が挙げる苦労点はケース1・2の方と毛色が違いました。
- シフト回収・配布
- 急な欠勤への対応
そして、業界全体の構造を表す発言が出ました。
「介護士はWワークしている人が多いんですよ」
Wワーク事情と急変対応
訪問介護やサ高住では、職員の多くが他社・他事業所と掛け持ちで働いています。厚生労働省の統計では医療・福祉業種の副業率は 9.9%(全産業平均9.7%) とほぼ同水準ですが、訪問・在宅系では時給制パート職員の掛け持ちが目立つ傾向です。
その結果、
- 自社のシフトと外部勤務先のシフトの整合性が見えない
- 急な欠員時にWワーク先と被って応援できない
- 法定総労働時間の上限管理が現場任せになりがち
——という、訪問・サ高住で特に顕在化しやすい構造があります。
「プラス1名いれば負担も減るし、応援要請にもすぐに対応できるんですけどね」
24時間体制が必須で、急変時の応援要請のスピードがそのままサービス品質を左右する世界。痛みは「組むこと」ではなく「組んだ後に起きる変動への対応」にありました。
: 厚生労働省「副業・兼業の現状」(労働基準局)/ JILPT「副業者の就業実態に関する調査」(No.231)
3つを並べてみえた、介護シフトの「鉄則」と「分岐」
3名の話をひとりずつ聞いた上で、並べてみると見えてくるものがあります。
共通する業界の鉄則
施設形態は違っても、3名の作成フローには共通点がありました。
1. 夜勤から組む
3名とも、最初に手を動かすのはF勤(夜勤)です。「全勤務種別を一気に最適化する」発想は誰も持っていない。夜勤→公休→日勤の順序が業界の暗黙標準でした。
2. 「夜勤→明→休」の3日サイクル
連続夜勤や夜勤明け即出勤は体力的に避ける。3日サイクルを優先し、夜勤を起点に休みを設計するメンタルモデルが共通しています。
3. 属性ベースの配置制約
「男性スタッフが重ならないように」「運転できるスタッフを確保」「リーダー資格者を均等に」——属性・スキル・経験のバランスへの配慮は3名すべてで言及されました。
痛みの中身は施設形態で分岐する
一方、3名が抱える痛みの中身はまったく違いました。
| サブセグメント | 中心となる痛み | 月の作成負荷 |
|---|---|---|
| 大規模入居施設(有料老人ホーム) | シフトパズルの複雑性 | 20時間以上 |
| 中規模複合施設(小規模多機能) | 加算要件・常勤換算の正確性 | 2〜3時間 |
| 訪問・サ高住 | 急変対応・Wワーク調整 | 1〜2時間 |
「介護シフト=大変」という雑な括りではなく、形態ごとに必要な解決策が違う——それが3名の話を並べてはじめて見えた事実でした。
なぜExcelでは解けないのか
3名中3名がExcelまたはスプレッドシートで作業していました。それでも痛みが残るのは、Excelは「計算」と「表示」はできても、「制約充足」を計算できないからです。
- 「夜勤の翌日は休み」——Excelでは検証できない
- 「リーダー1名以上」——Excelでは保証できない
- 「男女ペア比」——Excelでは可視化できない
- 「常勤換算」——Excelでは関数で組めても、配置とは連動しない
つまり、Excelは最後のチェック工程を人間に丸投げします。「何度チェックしても見つからない偏り」は、まさにこの構造的限界の症状です。
3名の話から導かれた、介護シフトツールの要件
| # | 要件 | 必要なセグメント |
|---|---|---|
| 1 | 夜勤先行の自動作成アルゴリズム | 全形態 |
| 2 | 「夜勤→明→休」サイクルの自動配置 | 全形態 |
| 3 | 男女ペア比・属性バランスの自動チェック | 全形態 |
| 4 | リーダー・資格保有者の最低人数確保 | 全形態 |
| 5 | 加算要件・常勤換算の自動計算 | 中規模複合施設 |
| 6 | 多事業所間スポット応援マッチング | 中規模複合施設・訪問サ高住 |
| 7 | Wワーク登録・他社シフト連携 | 訪問・サ高住 |
人員配置基準の詳細は「【施設別】介護の人員配置基準|計算式・早見表・違反リスク完全ガイド」、常勤換算の計算ロジックは「常勤換算の計算方法を業種別に解説」で解説しています。
令和6年度(2024年)介護報酬改定で、生産性向上の先進的な取り組み(テクノロジー活用等)を進めている介護付き施設を対象に、3対1の人員配置基準を3対0.9まで緩和できる新たなルールが設けられました(厚生労働省)。導入には指定権者への届出と一定の要件充足が必要です。
まとめ: 「介護=単一市場」という思い込みを捨てる
3名のインタビューを通じて、介護シフト作成は施設形態で大きく分岐していることが見えました。
| サブセグメント | 中心となる痛み | 訴求の方向性 |
|---|---|---|
| 大規模入居施設 | シフトパズルの複雑性 | 時短ROI |
| 中規模複合施設 | 加算要件・常勤換算 | コンプラ自動担保 |
| 訪問・サ高住 | 急変対応・Wワーク | 柔軟性・スポット連携 |
ご自身の施設がどのセグメントに近いか、3つのケースを読み返してみると、解くべき優先課題が見えてくるかもしれません。
そして、こうした「夜勤先行で組む」「加算要件を守る」「Wワーク先と被らないよう調整する」といった複数の制約を同時に満たし続ける作業は、Excelや紙の手作業ではどうしても限界があります。手元のフローを根本から変える選択肢の一つが、シフト作成ツールの活用です。
シフッタは介護領域のすべてのサブセグメントに対応する形で2026年5月リリース予定です。3ヶ月の無料お試し期間を用意しています。
次回予告: 保育領域の現場調査
同じ4月、保育領域でも管理者3名にインタビューを実施しました。保育園では月次の計画シフトと、日々の運用調整の両方を回すことが業務上必須となっており、介護とはまた違う構造の難しさが見えてきました。次回記事「保育園シフト作成の実態 - 月次計画と日次運用、両方を回す現場」で詳報します。