この記事でわかること
- 勤務間インターバル制度は、勤務終了後に一定の休息時間を確保する制度。2025年1月の報告書で義務化方針が示されたが、2026年の法案提出は見送りに。現在の導入率5.7%だが、医療・介護・製造業は早期対応が必要。
勤務間インターバル制度とは、終業から次の始業までの間に一定時間以上の休息時間を設けるという制度です。
努力義務とされている勤務間インターバル制度ですが、導入の必要性が説かれ続けており、義務化の動きもあります。
勤務間インターバル制度について、いつから義務化されるのか、2026年における現状と最新のスケジュールについて解説します。
勤務間インターバル制度とは
制度の定義と仕組み
勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する制度です。
たとえば、11時間のインターバルを設定した場合、23時に退勤した従業員は翌日10時まで出勤できません。これにより、睡眠時間や生活時間を確保し、過重労働による健康障害を防ぐことが目的です。
制度の運用方法としては、主に以下の2つのパターンがあります。
- 始業時刻を後ろ倒しにする方式:インターバル時間が確保できない場合、翌日の始業時刻を繰り下げる
- 一定時刻以降の残業を禁止する方式:インターバルが確保できるよう、前日の終業時刻自体を制限する
法的根拠:労働時間等設定改善法
勤務間インターバル制度の法的根拠は、労働時間等設定改善法(正式名称:労働時間等の設定の改善に関する特別措置法)です。
2018年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」により同法が改正され、2019年4月1日から事業主に対して勤務間インターバルの確保が努力義務として課されました。
具体的な条文(第2条第1項)は以下のとおりです。
事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
ポイントは「努力義務」である点です。現時点では義務規定ではないため、導入しなくても罰則はありません。ただし、この点は今後の法改正で大きく変わる可能性があります。
EU加盟国との比較
勤務間インターバル制度は、日本独自の制度ではありません。EUでは1993年のEU労働時間指令ですでに義務化されており、加盟国は全労働者に対して24時間ごとに最低連続11時間の休息を確保することが求められています。
| 国・地域 | インターバル時間 | 法的位置づけ | 特例 |
|---|---|---|---|
| EU指令 | 11時間 | 義務 | 加盟国の国内法で適用除外あり |
| ドイツ | 11時間 | 義務(労働時間法第5条) | 病院・介護・飲食等は10時間に短縮可 |
| フランス | 11時間 | 義務(労働法典L3131-1条) | 緊急活動等は代替休息で対応 |
| 日本 | 定めなし | 努力義務 | 運送業のみ事実上の義務(9〜11時間) |
日本は主要先進国の中でも、勤務間インターバルの法的保護が最も弱い国のひとつです。
勤務間インターバルは何時間が適切か
国の推奨は「11時間」、下限は「9時間」
法律上、インターバルの具体的な時間数は定められていません。しかし、厚生労働省の労働基準関係法制研究会の報告書(2025年1月公表)では、以下の方向性が示されています。
- 原則11時間のインターバルを確保する(EU基準に準拠)
- 業種や業務の特性に応じて最低9時間を下限とする
この「11時間」という数字には根拠があります。一般的に、通勤時間を往復2時間、食事・入浴などの生活時間を2時間と仮定すると、11時間のインターバルで確保できる睡眠時間は約7時間。これは厚生労働省が推奨する成人の睡眠時間とも合致しています。
運送業はすでに義務化済み
すべての業種に先駆けて、運送業(トラック・バス・タクシー)では事実上の勤務間インターバルが義務化されています。2024年4月に改正された「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)により、以下が定められました。
| 区分 | インターバル時間 |
|---|---|
| 原則 | 継続11時間以上 |
| 下限 | 継続9時間 |
※宿泊を伴う長距離貨物運送の場合は、継続8時間まで短縮可(週2回まで)。ただし運行終了後に12時間以上の休息が必要。
違反した場合は車両の使用停止処分などの行政処分の対象となります。この運送業の規定は、今後の全業種への義務化を占う先行事例として注目されています。
勤務パターン別のインターバル確認
自社のシフトが制度に対応できるかを確認するため、よくある勤務パターンごとのインターバル時間を整理しました。
| 勤務パターン | 退勤時刻 | 翌出勤時刻 | インターバル | 11時間確保 |
|---|---|---|---|---|
| 日勤→日勤(定時) | 18:00 | 翌9:00 | 15時間 | ○ |
| 日勤→日勤(残業あり) | 22:00 | 翌9:00 | 11時間 | ○ |
| 日勤→日勤(深夜残業) | 23:00 | 翌9:00 | 10時間 | × |
| 遅番→早番(介護) | 19:00 | 翌6:00 | 11時間 | ○ |
| 遅番→早番(介護・残業あり) | 20:00 | 翌6:00 | 10時間 | × |
| 日勤→深夜勤(看護3交代) | 17:30 | 翌0:30 | 7時間 | × |
特に交代制勤務を採用している業界(医療・介護・製造業)では、インターバルの確保が構造的に難しいケースがあることがわかります。
2026年義務化の最新動向
労働基準関係法制研究会の報告書(2025年1月公表)
2025年1月、厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」が報告書を公表しました。2024年1月から全16回にわたる議論を経てまとめられた、約40年ぶりとなる労働基準法の大規模改正に向けた提言です。勤務間インターバル制度については以下の方向性が示されています。
- 勤務間インターバル制度の「抜本的な導入促進と義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要がある」
- インターバル時間は原則11時間、業種特性に応じて下限9時間を目安とする方向
- 13日を超える連続勤務の禁止を新設すべき(現行法では理論上最大48日間の連続勤務が可能)
- 法定休日の特定をあらかじめ法律上に規定すべき
2026年の法案提出は「見送り」
しかし、2025年12月、厚生労働省は2026年の通常国会への改正法案の提出を見送る方針を固めました。
見送りの主な理由は、高市政権の政策方針転換です。高市総理が厚生労働大臣に対し「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の柔軟化」の検討を指示。厚生労働省が進めていた「労働者保護の強化」の方向性と異なるため、調整が必要になりました。
「見送り=やらなくていい」ではない
ただし、法案提出の見送りは、義務化そのものが撤回されたことを意味しません。以下の理由から、企業は今から準備を進めるべきです。
- 議論は継続中:労働政策審議会での検討は引き続き行われており、施行時期は現時点では未定です
- 施行までの準備期間:義務化が決まった場合、シフト体制の見直しには相当の時間が必要です
- 人材確保の観点:インターバル制度の導入は、採用競争力の強化にもつながります。厚生労働省の調査では、制度導入企業で従業員の満足度が向上したという報告があります
- 助成金の活用:現時点で導入する企業には、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)が利用可能です(最大120万円)
導入率はわずか6%——企業の現状
就労条件総合調査の結果
厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」によると、勤務間インターバル制度の導入状況は以下の通りです。
| 状況 | 令和5年(2023年) | 令和6年(2024年) |
|---|---|---|
| 導入している | 6.0% | 5.7% |
| 導入を予定又は検討している | 11.8% | 15.6% |
| 導入予定はなく、検討もしていない | 81.5% | 78.5% |
導入企業はわずか5.7%にとどまる一方、「検討している」企業は前年から3.8ポイント増加しています。義務化の議論を受けて、検討段階に入った企業が増えていることがうかがえます。
政府は「過労死等防止対策大綱」(2021年7月閣議決定)において、2025年までに勤務間インターバル制度の導入率15%以上、制度を知らない企業の割合5%未満という目標を掲げていましたが、いずれも未達の状況です。
導入が進まない3つの理由
制度を導入していない企業が挙げる主な理由は以下の通りです(令和7年就労条件総合調査)。
- 「超過勤務の機会が少なく、必要性を感じない」(57.3%):定時退社が基本の企業にとっては、制度導入のメリットが見えにくい
- 「制度自体を知らなかった」(15.7%):努力義務化から7年が経過しても、認知度は依然として低い
- 「人員体制上、対応が難しい」:特に医療・介護など24時間体制の業界では、インターバルの確保が人手不足と直結する
業界別の影響と対応ポイント
勤務間インターバル制度の影響は、業界によって大きく異なります。特にシフト制を採用している業界では、制度対応がシフト作成の根本的な見直しにつながります。
医療・看護
医療現場、特に看護師のシフトは、勤務間インターバル制度の影響を最も受ける領域のひとつです。
三交代制の課題
三交代制(日勤・準夜勤・深夜勤)では、日勤の終了後にそのまま深夜勤に入る「日勤深夜」と呼ばれるシフトパターンが問題となります。17時台に日勤を終え、翌0時台に深夜勤に出勤する場合、インターバルは6〜7時間程度しか確保できません。
日本看護協会は「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」において、以下を推奨しています。
- 勤務間インターバルは11時間以上を確保する
- 1日の勤務時間の上限は13時間とする
- 三交代制の場合、夜勤は月8回以内とする
ノルウェーの看護師を対象にした研究では、勤務間インターバル11時間未満の勤務が月3回あると病欠が約21%増加するという結果が報告されています。インターバルの確保は、職員の健康維持だけでなく、人手不足の防止にもつながります。
介護
介護施設では、遅番(10:00〜19:00)から早番(6:00〜15:00)への連続シフトがインターバルを圧迫するパターンとして知られています。遅番の終了が19時、翌日の早番が6時の場合、インターバルは11時間とギリギリです。残業が発生すれば、たちまち11時間を下回ります。
製造業・工場
製造業では三交代制(8時間×3シフト)が一般的で、シフトの切り替え時にインターバルが問題になります。
| シフト | 勤務時間 | 次シフトまでのインターバル |
|---|---|---|
| 日勤→準夜勤 | 8:00-16:00 → 16:00-0:00 | 24時間(翌日準夜) |
| 準夜勤→夜勤 | 16:00-0:00 → 0:00-8:00 | 24時間(翌日夜勤) |
| 夜勤→日勤 | 0:00-8:00 → 8:00-16:00 | 24時間(翌日日勤) |
三交代制の場合、同一シフトの連続であれば16時間のインターバルが確保されますが、シフト切り替えのタイミングや残業発生時に注意が必要です。特に、引き継ぎや設備トラブルによる残業は、インターバルを圧迫する要因になります。
勤務間インターバルに対応したシフトの組み方
手動でインターバルを守る限界
Excelや紙でシフトを管理している現場では、勤務間インターバルの確保は担当者の記憶と注意力に依存します。特に以下の状況では、手動管理の限界が顕著になります。
- スタッフ数が多い場合:20人以上のスタッフのインターバルをすべてチェックするのは現実的ではない
- 急な欠勤や交代が発生した場合:インターバル違反を見落とすリスクが高まる
- 複数の制約条件がある場合:インターバルだけでなく、資格配置基準や連続勤務日数の上限も同時に満たす必要がある
チェックすべき制約条件
勤務間インターバル制度に対応するには、以下の条件をシフト作成時に同時にチェックする必要があります。
- インターバル時間:退勤〜翌出勤まで11時間(または9時間)以上か
- 連続勤務日数:13日以内か(法改正で新設見込み)
- 法定休日:週1日以上の休日があるか
- 夜勤回数:月の上限を超えていないか
- 資格・配置基準:業界ごとの法定配置基準を満たしているか
これらを手動で同時に管理することは、スタッフ数が増えるほど困難になります。
シフト作成ツールによる自動チェック
シフト作成ツールを活用すれば、インターバル時間を制約条件として組み込み、違反がないシフトを自動で作成できます。特に、数理最適化やAIを搭載したツールでは、以下のことが可能です。
- インターバル時間を制約条件として設定し、違反するシフトパターンを自動で排除
- 配置基準や夜勤回数など複数の制約を同時に最適化
- 急な変更時にも制約を満たしたまま再調整
手動で数時間かかっていたシフト作成が、制約条件を設定するだけで自動化できるため、管理者の負担を大幅に軽減できます。
助成金を活用した導入
勤務間インターバル制度を導入する中小企業には、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)が利用可能です。
助成金の概要(令和7年度実績)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 中小企業事業主 |
| 補助率 | 対象経費の3/4(常時30人以下かつ取組6〜9実施時は4/5) |
| 対象となるインターバル | 9時間以上 |
インターバル時間別の支給上限額:
| 休息時間数 | 新規導入 | 適用範囲の拡大・時間延長 |
|---|---|---|
| 9時間以上11時間未満 | 100万円 | 50万円 |
| 11時間以上 | 120万円 | 60万円 |
さらに、賃金引き上げを併せて実施した場合は加算があり、引き上げ率や対象者数に応じて追加助成を受けることも可能です。
対象となる取り組み
助成金の対象となる取り組みには、以下のようなものがあります(1つ以上の実施が必要)。
- 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
- 労務管理用機器の導入・更新
- 就業規則・労使協定の作成・変更
- 労務管理担当者への研修
- 外部専門家(社労士等)によるコンサルティング
シフト管理ツールの導入費用も「労務管理用ソフトウェア」として助成金の対象になる可能性があります。
令和8年度(2026年度)の申請について
令和8年度の申請受付は、令和8年度本予算の成立後に開始される予定です。受付開始時期は厚生労働省の公式ページで発表されます。申請は毎年度の予算枠内のため、受付開始後は早めの申請が推奨されます。
詳細は厚生労働省の公式ページ(働き方改革推進支援助成金)をご確認ください。
よくある質問
努力義務の対象は「すべての労働者」であり、パート・アルバイトを含むすべての雇用形態が対象です。
労働時間等設定改善法の努力義務は事業主に対するものであり、管理監督者も含めた全従業員が対象です。ただし、現行法では罰則がないため、実効性の確保は企業の姿勢に委ねられています。
現行法では努力義務のため、緊急時の例外規定は特に定められていません。ただし、EU加盟国やドイツでは「代替休息」の仕組みがあり、インターバルが確保できなかった場合に別日で休息を補償する運用が行われています。今後の日本の法改正でも、同様の例外規定が設けられる可能性があります。
厚生労働省の「勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル」に規定例が掲載されています。一般的には、「終業から翌日の始業までに少なくとも○時間の休息時間を設ける」という規定を就業規則に追加します。
インターバルの確保により、一人あたりの労働時間が制限される場合は、追加の人員配置が必要になる可能性はあります。一方で、導入企業からは「残業の減少」「病欠の減少」「離職率の低下」などの効果も報告されており、中長期的にはコスト削減につながるケースもあります。
まとめ
勤務間インターバル制度は、現時点では努力義務にとどまっていますが、義務化に向けた議論は着実に進んでいます。
今すぐ取り組むべき3つのこと:
- 自社のシフトを点検する:現在のシフトパターンで11時間のインターバルが確保できているかを確認しましょう
- 就業規則を整備する:助成金の活用も視野に入れて、制度の導入準備を進めましょう
- シフト作成の仕組みを見直す:手動でのインターバル管理には限界があります。制約条件を自動でチェックできるツールの活用を検討しましょう
特に医療・介護・製造業など交代制勤務を採用している業界では、義務化を待たず早期に対応を始めることが、従業員の健康確保と人材定着の両面で有効です。